播磨の家 バリアフリー改修
在来工法の土壁の家のリノベーション
この住宅は、播磨の地に昭和50年代に建てられた在来工法の建物である。
土壁の家であるが、伝統構法とは違い、筋交やコンクリートの基礎を使って建てられている。
間取りも伝統的な「和室」に、モダンなデザインの「中廊下」と「応接間」を組み合わせた「応接間付中廊下住宅」である。
伝統的な民家から土壁を使わない今の住宅へ以降するちょうど過渡期の建物である。
このような住宅を「分析・対策」し、「住宅の特徴を生かした改修」を行った。
多くの自然素材で作られている伝統的な民家の要素を持っている建物のため「自然素材(南西サクラ無垢材)」を使うことが、長く住まわれててきた居住者には違和感がなく快適と感じる。
「新しい機能・デザインの設備や材料」は適切に採用し、住宅の性能を今の基準に近づけていく。
段差が少なく、暖かく、明るい、広く、掃除しやすく、十分な電気容量になど、色々な住宅の性能をあげることで、これから生活される居住者の色々なバリアフリーを実現したいと考えた。
大きな民家のバリアフリー改修モデル
子供たちが独立し、今後は高齢者を含めた2人で生活されることになった。
以前は部屋の数が必要であったが、今後はそれほど必要がなく、むしろ水廻り「ダイニング・キッチン」「浴室」「洗面室」「トイレ」を広くし、「バリアフリー対応」とすることが必要になった。
家事の動線を短く、なるべく一体的に利用でき、人の気配が感じることができるような間取りとすることを考えた。
また、必要な設備の更新や補修にあわせ、過剰な改修ではなく、必要で適切なコストで改修するように配慮した。
この地域には、同じような部屋数には余裕があるが水回りが狭い「大きな民家」多く、居住者が高齢で少人数になる場合も多い。このような「大きな民家」の高齢の居住者に適した「バリアフリー改修モデル」となることを目指した。
光の分析・検討
改修前の光の入り方を分析した。「中廊下」には光が入らない、玄関から見ても暗く、建物全体が暗い印象がある。
「中廊下型住宅」の特徴である。
また、「ダイニング・キッチン」に東からの窓が無く、暗く寒い状態であった。
これは水回りが、東側に配置されているためである。
バリアフリー改修で「浴室」「洗面室」を移動し、新しい「ワークスペース(WS)」と「洗面室」に窓を設置することでこれらを解消することとした。
中廊下からワークスペースを通して、明るい外が見え、暗く狭い廊下の印象を緩和している。
風の分析・検討
改修前の風の通りを分析した。伝統的な民家の要素を持ったこの住宅は、もともと風の通りは良い。
水回りの位置の変更行うことで、この特性を失わず、より風の通りを良くするように窓や扉を設置した。
モダンな浴室の形状を活かす
モダンなアール形状の天井を持ち、モルタルのテクチャーも味わいがあった。
新たにつくるワークスペースは、補修しこの形状と壁をそのまま活かすこととした。
今までの記憶を残しつつ新たな役割を持った場所となった。
改修前(浴室)
改修後(ワークスペース)
建具の再利用
改修では使える立派な建具を撤去・破棄しなければならない場合も多い。
他の現場で不要となった事務所等で建具を保管している。
今回は、コストを抑えるために、保管していた建具を再利用して使用している。
特別高価な建具ではないが、昭和の模様のあるガラスをつかった建具は、今つくることができない。
補修・再塗装することで、再び活かすことができ、同じ時代の建物にはよく馴染んでいる。
意匠設計:田村真一建築設計事務所
施工:松岡建築事務所